Bio3DPrinting社、人体組織工学を大きく前進

ダッソー・システムズのSOLIDWORKS Extendedポートフォリオは、患者自身の細胞を用いて機能的なヒト臓器を生成する3Dバイオプリンティング技術の開発において、極めて重要な役割を果たしています。

課題

三次元の生きた組織構造を再現する、革新的な新型3Dバイオプリンタを開発する。

解決策

SOLIDWORKS® Extendedポートフォリオを導入し、実際の生体に近い組織を再現できる画期的な3Dプリンタを製造する。荷重、気象、摩耗といった現実世界での負荷に耐え、時間の経過に伴う細胞の生存、組織生成、発達を支えるために必要な機械的、化学的、生物学的条件を備えるよう設計する。

結果

  • コンセプトから生産まで、新製品の開発スピードが向上
  • 設計を簡素化して部品数を減らし、機械的エラーを低減
  • コンセプトから最終生産モデルまで、設計を合理化
  • SOLIDWORKS内のすべての部品を管理

産学連携によって設立されたBio3DPrinting社は、2010年前後に研究から生まれたElectrospider技術の実用化を加速させることを目的に、2021年に設立されました。Electrospiderは、三次元の生きた組織構造を再現する3Dバイオプリンティング装置です。従来の3Dプリンティングと同様に、デジタル モデルを基に積層して構築する方式を採用しています。

イタリアのピサ大学の研究者であり、Bio3DPrinting社の社長でもあるAurora De Acutis氏は、「従来の3Dプリンティングとは異なり、細胞やバイオポリマーといった生体由来の素材を使用しています。これらはバイオインクまたはバイオマテリアル インクと呼ばれることもあります」と説明し、さらに「今ではこうした組織構造が新薬の開発や評価、個別化医療の領域で利用されています」と語っています。

生体素材の生成プロセスを示す拡大図と顕微鏡写真のコラージュ

Bio3DPrinting社の3Dバイオプリンティング技術「Electrospider」を使えば、この単一システムのみで複雑なヒト組織モデルを再現することができます。このブレークスルーにより、複数のバイオプリンティング技術が統合ワークフローに一体化され、特に再生医療や薬剤試験、組織工学の領域におけるバイオファブリケーションが大きく前進しました。

 

生体システムの3Dプリンティングにおける課題

体外でヒト組織を再現するためには、まず体内の細胞外マトリックス環境を再現したスキャフォールド(足場構造)を作る必要があります。このスキャフォールドは、細胞が入る三次元構造など、細胞を物理的かつ化学的にサポートする場所となり、細胞の接着、増殖、成熟を可能にします。

ヒトの組織は、ナノ単位からマイクロ単位に及ぶ階層構造で組織化された、多様な材料から成る複雑なシステムです。そのため、各組織の機械的および生物学的機能を再現するうえで、精密に配置することが不可欠です。De Acutis氏は「スキャフォールドをできる限り機能的なものにするためには、これらすべての要素を再現することが極めて重要です」と説明し、さらに「このようにして必要なすべてのバイオマテリアルでプリントされた細胞は、接着と増殖に適した快適な環境を得ることができます」と語ります。

スキャフォールドには、細胞を固定するための物理的な枠組み以外の役割があります。それは、細胞の成長や移動、分裂、成熟を能動的に左右する精密に設計された環境としての役割です。橋や機械を設計する際に荷重や気候、摩耗といった現実世界における負荷に耐えられるように考慮するのと同様に、バイオプリントされたスキャフォールドも、細胞が長期にわたって生存、組織化、発達していくために必要な機械的、化学的、生物学的条件を備えるよう綿密に設計する必要があります。

生成されたヒト組織が入っているペトリ皿
Bio3DPrintingで再現したヒトのサンプル組織

関連リソース

「私たちにとって、SOLIDWORKS Extendedポートフォリオは、あらゆる段階で不可欠の存在でした」

Aurora De Acutis氏

社長

今も変わらない「必要は発明の母」

Electrospider 3Dバイオプリンタを開発した背景には、信頼性と再現性を兼ね備えたバイオプリンティングを実現したいという強いニーズがありました。Electrospiderが完成する以前の、非効率で統一感のないプロセスを、De Acutis氏はこう振り返ります。「まず、ある解像度でバイオマテリアルを扱えるバイオプリンタでスキャフォールドを生成し、次の工程に移ると、別の技術を使って他のバイオマテリアルを追加したり、同じマテリアルを異なる精度で再加工したりしていました」 

このようにワークフローが統一されておらず、複数の技術を行き来して何度も人為的に操作しなければならなかったため、最終的に生成される構造物の品質が低下することが多々ありました。人体での使用を想定した場合は、これが大きな問題となります。

こうした手法に限界を感じていたことが、「複数のバイオマテリアルを異なる解像度で同時に処理できる単一のバイオプリンタを設計する」という大胆な発想につながりました。目標は、真のマルチスケールかつマルチマテリアルのバイオファブリケーションを実現することです。プロセスを合理化することで、エラーが最小限に抑えられ、一貫性と品質が大きく向上します。

ラボにあるBio3DPrinting社のプリンタ
人間の組織を再現するために開発された初の3Dバイオプリンタ「Electrospider」

製品開発に最も適したツール

「私たちにとって、SOLIDWORKS Extendedポートフォリオは、あらゆる段階で不可欠の存在でした」とDe Acutis氏は絶賛します。Bio3DPrinting社では、バイオプリンティングのプロセスをリアルタイムで監視、制御するために、人工知能の導入にも取り組んでいます。バイオプリントされた最終的な構造物が臨床応用に求められる厳格な基準を満たすように、各工程を正確に管理することが目標です。

「プリントするだけで命を救える。そう考えると胸が熱くなります」とDe Acutis氏は締めくくります。その夢こそが、この領域で進化を続けるBio3DPrinting社の原動力となっています。同社は、将来的に多くの病院やクリニックでバイオプリンタが導入されることを期待しています。最終的な目標は、臓器そのものをプリントし、人の命を救うことです。

製品:

  • SOLIDWORKS Premium CAD
  • SOLIDWORKS Simulation Premium
  • Collaborative Designer for SOLIDWORKS
  • Collaborative Industry Innovator
     

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