自動製図システム開発で設計・製図時間を最大 1/10へ大幅短縮
生産性向上という第1の目的を達成するため、 3次元CADに
は、「自動製図の実現」「材料表との連動」という2つの機能を
強く求めた。
「SOLIDWORKSを初めて操作したとき、直感的な操作体系
で使いやすいと思いましたが、それだけなら導入しなかった
でしょう。構想レイアウトを活用したトップダウン設計の機能
に触れて、自動製図が実現できそうだと確信したとき、『これ
だ!』と叫びました。さらに、カットリスト連動による材料明細自
動作成機能も、実務に使えると判断しました」と立川氏。
2015年10月、SOLIDWORKSを2ライセンス導入した。検
証、マザーモデル製作を経て、自動製図機能を開発。水門と
除塵機という主力 2製品については、6~8割、自動製図でカ
バーできる体制が整った。
自動製図システムは、メンテナンス性を高めるため、
SOLIDWORKSの基本機能だけで開発した。
「『線を引けば図ができる』から、『骨を描けば立体ができる』
へと発想を転換するところが、自動製図のポイントです。『モ
ノの上にモノを足していく』ではなく、『面にすべての情報を
持たせて、面を動かしていく』のです」と立川氏は言う。
自動製図が大きな成果をあげたのが、除塵機設計だ。
除塵機は、排水機場で使う設備である。排水機場は、支流に溜
まった水をポンプで吸い上げ、本流へ吐き出す設備で、止ま
れば、周囲の田畑や住宅が浸水してしまう。排水ポンプの連
続稼働を守るのが、水と一緒に吸い上げられるゴミを確実に
取り除く除塵機である。
「現場の地形や水量などに対応できるように多数のマザーモ
デルを用意したいところですが、要素を極力整理して、数パ
ターンに絞り込みました」と立川氏。除塵機は構造が複雑で
図面が25~40枚必要だが、自動製図を行えば、ミスのない
設計ができ、図面も自動出図できる。設計・製図時間は最大で
1/10にまで短縮することができた。
ベテランから若手への技術継承でも明らかな効果
自動製図システムが完成し、 2017年4月からは、設計者の
実務利用がスタートする。利用を拡大していくとともに、
SOLIDWORKSのライセンス数も設計全社員へと増やしてい
く予定だ。
期待される効果の筆頭は、設計の生産性向上、収益性向上で
ある。
「水門でのテスト設計でも 1/2~1/10の時間短縮効果が出
ていますから、生産性は間違いなく向上できます。さらに、製
図の間違いが減少すれば、工場で部材の作り直しをしたりす
る手戻り経費も削減され、収益性が高まります」と立川氏。
ベテランから若手への技術継承でも効果が期待される。
「いままでは、職人気質のベテランが技術を口伝えにしてきま
した。ところが3次元で全体像を把握した若手設計者は、ベテ
ランの言っている意味を理解するのが明らかに速い。マザー
モデルを見れば、最良の設計手順もすぐに習得できます。こ
れまで一人前の設計者になるには 10年かかっていましたが、
大きく短縮できるでしょう」と伊東氏。
製造部門でも 3次元導入を歓迎している。
「いままで、10~40枚もある図面のあちこちを見ながら手拾
いしていた材料明細表が自動出力されるというだけでも大喜
びです。さらに、タブレットと eDrawingsを配布するので、寸
法が記入していないところを計測したり、見たい部位の断面を
自分で確認できるようになると社内でデモをしたら、『早く導
入してほしい』とせかされています」と伊東氏はにっこりする。
i-Constructionへの対応力も着々と蓄積されつつある。
たとえば、開成工業は、すでにウェアラブルカメラを使い始め
ている。現場にいる若手がウェアラブルカメラで映像を示し
ながら質問すると、デスクにいるベテランが、「もっと左に設置
したほうがいいだろう、そう、そこだ」などとリアルタイム指示
をして効果をあげているが、ここでも 3次元データの連携を
工夫していこうと考えているのだ。
さて、「自動製図の実現」という目標は達成された現在、次の
目標として、自動製図とマザーモデルの「全製品網羅」を目
指す。
解析による製品改良の効率化、SOLIDWORKS Composer
を使った組立手順動画の作成、 3Dプリンタによる試作、最新
のNC工作機械を備えた協力会社との CAMデータ連動など、
現在進行中・検証中の取り組みも数多い。