Challenge

設計-試作-試験の回数を減らしたい。試作前に机上で設計の妥当性の確認、品質の確保、最適化を図りたい。

Solution

3DEXPERIENCE Works Simulationを導入し、構造解析を行うことで、試作前に机上で設計の妥当性を確認し、設計品質を向上させた。

Results

SOLIDWORKSと3DEXPERIENCE Works Simulationを使ったシミュレーションにより、落下する瞬間の内容物の挙動や0.01秒単位での動きを観察できるようになり、高品質な設計が可能になった。

設計―試作―試験を繰り返して設計品質を確認

SBS東芝ロジスティクスの包装・設備技術グループは数グラムの電子部品から数百トンのインフラ機器までの調達・生産・流通の工程を俯瞰し、お客様視点で全体最適につながる包装技術や物流治具ソリューションを提供する。包装設計、試作、試験、改善のコンサルティングまで一貫したサービスを展開し、「デザイン・フォー・ロジスティクス(DFL)」をコンセプトに上流工程である製品企画にまでさかのぼって包装設計に取り組み、ロジスティクスの全体
最適を実現している。

包装設計の従来の設計プロセスでは、蓄積したデータと知見に基づいて設計し、設計-試作-試験を繰り返して設計の妥当性を検証することが多かった。これには百万円単位のコストと数ヶ月の期間がかかるため、いかに設計-試作-試験を減らすかが課題になっていた。

また、試験ができない製品も存在する。高価な受注生産品は一品物であり、落下や振動の試験ができない。そのため、社内外の規格に合わせて設計していたが、安全重視のオーバースペックな設計となる傾向にあった。設計-試作-試験を繰り返して設計の妥当性を確認するという従来の設計プロセスを脱却し、試作前に設計の妥当性を検証するために導入されたのが3DEXPERIENCE Works Simulationである。

 

構造解析により設計の妥当性を事前チェック

「4~5年前からSOLIDWORKSを使っていましたが、設計の妥当性は包装材を試作し、試験するまでは検証できませんでした。高価な一品物はそもそも試験ができません。試作し、試験するまでは設計の良し悪しがわからない、試験できない製品もあるという状態から脱却する手段を検討する中で着目したのが構造解析です」
「いくつか汎用構造解析ソフトを検討した中で3DEXPERIENCEWorks Simulationにたどり着いたのは以下のような理由です。

  • SOLIDWORKSとデータ連係ができ、操作性が共通している
  • 衝撃などの非線形動的解析ができる
  • 材料キャリブレーション機能を使って材料データを作成できる

導入にあたっては3ヶ月のトライアルを2回行い、構造解析と試験結果が一致するか、材料データが作成できるか、モデルに適用できるかなどを検証し、問題なく使用できると判断して導入に踏み切りました」

 

段ボール材の構造解析で差別化する

3DEXPERIENCE Works Simulationの導入にあたって、まず着手したのが『段ボール材の衝撃解析』です。段ボール材はプラスチック素材に変わるエコな包装材として注目を集めているため、これまで以上に活用することが求められていました」

「しかし、段ボール材の材料データが揃っているCAEがなかったので、自力でデータを作成し、材料や形状に適した解析条件設定などのノウハウを蓄積しました。新規性が高く、困難な挑戦でしたが実設計に使えるレベルを実現できました。エコ素材である段ボール材の構造解析は、競合他社が手を付けておらず、弊社の差別化要素としてお客様への提案する際の強力な武器となっています」

以前にCAEを使った経験がなく、3DEXPERIENCEWorks Simulationではじめて構造解析にチャレンジしました。構造解析をするために包装材の材料データを作る必要がありましたが、材料キャリブレーション機能を使ってスムーズに作ることができました

戸田氏
SBS東芝ロジスティクス株式会社 包装・設備技術担当
「構造解析により、肉眼では見えなかった現象、挙動が把握できるようになりました」
- SBS東芝ロジスティクス株式会社
包装・設備技術担当 戸田氏

 

設計プロセスが変わった

3DEXPERIENCE Works Simulationを導入して1年ほどが経ち、設計プロセスが大きく変わりました。従来のプロセスでは設計-試作-試験を繰り返して設計の妥当性を検証していたため、コストと時間が増えてしまうのが悩みの種でした」
3DEXPERIENCE Works Simulation導入後は、設計の妥当性を構造解析で検証し、試験を待たずに改善できるので、設計―試作-試験の回数を劇的に減らせる感触があります。また、お客様とのデザインレビューでは解析アニメーションやプロットなどを使って設計の妥当性を確認できるので、お客様視点に立った信頼性の高い設計につながっています」

実機試験では見えなかった動きが見えるように

「実際に構造解析を行ってみると、実機試験では見えなかった動きが見えることに強い印象を受けました。落下試験の衝突時間はわずか0.01~0.02秒です。この短い時間に箱の内容物の動きを肉眼で見ることは不可能です。しかし、3DEXPERIENCE Works Simulationでの構造解析では、0.01秒の衝突をコマ送りで見たり、箱を非表示にして内容物の動きを見たり、断面図を表示して観察するなど、これまで見ることのできなかった動きを見ながら解析できます。ようやく設計-試作-試験を繰り返す設計プロセスからの出口が見つかりました」

CAE初心者でも導入できた

「「実は、以前にCAEを使った経験がなく、3DEXPERIENCEWorks Simulationではじめて構造解析にチャレンジしました。構造解析をするために包装材の材料データを作る必要がありましたが、材料キャリブレーション機能を使ってスムーズに作ることができました」

「CAEに不慣れなので、eラーニングシステムの3DEXPERIENCE Edu SPACE(3DXES)、デモ教材、ユーザーアシスタンスなどのナレッジを活用し、代理店さんのサポートと合わせて、初心者ながら材料データの作成、解析条件の設定、モデル作成、シミュレーションまでを実行できました」

「SOLIDWORKSとのデータ連係も重要です。形状などの設計変更を行って再シミュレーションを行う場合、まずSOLIDWORKSで変更を行った後に3DEXPERIENCE Works Simulationで該当箇所を更新すれば、すぐに変更部分を解析できます。CAEの活用で設計効率が大幅に向上しました」

 

「新しい技術を会社の成長エンジンとして確立し、お客様視点に立った付加価値向上を目指します」
-SBS東芝ロジスティクス株式会社
物流改革推進部長 鏡氏

 

「構造解析を自分たちのものとして使いこなし、設計-試作-試験のコスト低減、期間短縮、設計品質の確保、設計の最適化を実現し、お客様視点での付加価値を提供したいという強い思いがあります。今後の課題としては『使いこなす』『横展開する』『営業活動につなげる』『お客様の付加価値向上を実現する』が挙げられます」

「『使いこなす』ために、解析する材料を木材などに広げます。現在は衝撃解析がメインですが、解析モードを拡大して振動解析も行っていきます」

「『横展開する』ために、構造解析のノウハウを社内で共有し、お客様視点で構造解析できる技術者を増やしていきます」

「『営業活動につなげる』『お客様の付加価値向上を実現する』ために、営業部門と連携し、構造解析を差別化要素として位置付けてお客様へ提案していきます」

「弊社の注力領域となる重量物、医療、精密機器、半導体、ゼネコン、サブコン、量販、海外ロジスティクス、コンサルティングについては、競合他社に負けない会社となるよう営業力を強化していきます。物流改革推進部も先進技術を成長エンジンとして、弊社ならではの観点で提案を行っていきます」

物流で社会を支えるSBS東芝ロジスティクスにとって構造解析を使った高品質な設計は不可欠だ。今後、さらに物流コンサルティング、4PLサービスなどロジスティクスから未来を変える挑戦は続いていく。3DEXPERIENCE Works Simulationは、今後もSBS東芝ロジスティクスの包装設計の中核を担い続けるだろう。