Challenge

2次元CADでは製図作成時や製図作成後の整合性
確認及び各種チェックに多くの時間とコストがかか
り、営業現場などでもお客様にイメージを伝えるこ
とができなかった。

Solution

SOLIDWORKSProfessionalを5ライセンス
導入。開発から製作まで3次元CADで行うよ
うにした。また新たに開発した商品については
SOLIDWORKSSimulationProfessionalを1ラ
イセンス導入。応力の集中する部分や、ゆがみの
集中する部分を設計段階で把握し製品に反映さ
せる。

Results

  • 金型製図の大幅時間短縮と、完成後のチェックを省力化。作図時間は1/3、ミスもなくなった。
  • 3次元モデルをその場で見せ、お客様とイメージのやりとりが極めて容易に。営業現場でのデータ活用頻度があがる。
  • 線形応力解析の実行で、目標耐力をコントロールできるようになり、試験頻度とコストを削減。

独自技術で製品開発に挑み続け接合金具の代名詞「テックワン」を開発

新潟県見附市に本社をおく木造建築の総合資材メーカー・株
式会社タツミは、日本の伝統工法である在来軸組み工法を進
化させた金具接合工法のパイオニア。その供給数は市場の 
60%と圧倒的シェアを占めている。
同社では接合金具の代名詞でもある「テックワン」を始め、さ
まざまな木造建築向け商品群を持ち、ハイレベルで自由度の
高い施工精度を実現している。また自社および第三者機関に
て耐震実験・強度実験を重ねることによる耐久性、そして職人
不足に伴う現場効率化・流通効率化まで考慮した商品開発に
も力を入れている。
そのほかに、あらかじめ工場で木材をカットして金物をとりつ
ける「プレカット」に着手。CADセンターにて伏図・加工図・構造
計算を行い、構造躯体一式を現場に納入している。
近年同社を取り巻く環境も変わってきている。 
2010年に施行された「公共建築物等木材利用促進法」に象徴されるよう
な林野庁による戦後植林の有効利用促進がすすめられるな
かで、同社の役割はますます大きくなっていくであろう。

 


建築金物の設計図を 3次元化し、業務効率化を実現

「最近は木材のもつ『温かみ』が見直され、特に小・中学校など
でニーズが高いですね」と、株式会社タツミの営業企画開発
管理本部東京営業所係長・吉田邦生氏は、まだリフォームされ
たばかりの真新しい東京営業所オフィスで、そう切り出した。
近年の木質系構造部材の技術向上や国の政策によるバック
アップにより、広い空間が必要な公共建築物・学校・介護施設・
店舗等においても木造建築のニーズが増えることが予想さ
れている。 
ただ、そのニーズに応えていくには、建築金物の製作時間お
よび試験時間短縮、さらにはコスト削減も目指していかなけ
ればならない。そんな中、吉田氏は2次元CADを用いての開
発から製作までの工程に限界を感じていたという。
「本来、木材同士をしっかりつなぐための『継手』や『仕口』部
分は、熟練の大工の腕が必要なのです。そこを特殊な技量が
なくても組み立てを可能にするのが当社の建築金物です」
タツミの提供する建築金物は、建築現場での効率化を実現す
るばかりでなく、耐震性や堅牢性に優れたものである。にも関
わらず、建築金物自体の2次元CADによる作図を読み解くの
に相応のスキルと経験が求められてしまうとあっては、本末
転倒というわけだ。
「作図作業自体もそうですが、作図を読み解くにも平面だと
それ相応の経験を必要とします」
こうした同社および吉田氏の危機意識は決して最近に始まっ
たことではない。
「会社のほうにも、新しいものをどんどん入れていきましょう
と提案しました」吉田氏は独学でSOLIDWORKSの使い方を
習得、分厚い参考書を読み込まなくても直感で使いやすいイ
ンターフェースが特に魅力という。こうした印象は、何も吉田
氏に限ったことではない。SOLIDWORKSに初めて触れる若
い社員でも、4日間程度の研修で使いこなせるようになり、
「私は直接何も教えていません。とても手離れが良いですね」
と吉田氏はにこやかに語る。
現在タツミでは吉田氏を筆頭に4名がSOLIDWORKSを使っ
た建築金物の開発から製作に携わっており、さまざまなメリッ
トを感じているという。作図時間の面では、簡単な金具であ
れば1日程度必要だったものが数時間で、特殊な金型の場合 
6日程度必要だったものが2日程度まで短縮できるようになっ
たという。

メリットは時間短縮だけではない。製図完成後のチェックに関
しても、ほぼミスがなくなり、ムダなチェックを省くことができ
るようになったという。

「SOLIDWORKSの良さを一番実感するのは、モデリングから
図面を作成する過程です。製造現場は紙図面を使いますが、
以前は三面図を描いてモデルと突き合わせていました。そこ
では図面を読み取る技量も必要になってきます。たとえば隠
線一つ見落とさないようになるまでには、たいへんな技術と
労力がかかります。それが今ではモデルデータと紙図面がリ
ンクするようになったのです」

それは製造現場とのコミュニケーションの場面にとどまらな
い。たとえば営業現場では、お客様に3次元化したモデリング
を見せることによってイメージが伝わりやすくなり、俯瞰で見
たいという要望にもタブレット一つでその場で応えられる、と
いう具合だ。

たとえば丸い柱に木をとりつける場合、建築金物を扇状に広げていきますが、すべて勾配が変わります。2次元の場合だと360度見回しながら一つずつ考えていく必要がありました。SOLIDWORKSを使えば一度モデリングすれば自動で切り出してくれるため、圧倒的な時間短縮が可能になりました。

吉田 邦生 氏
株式会社タツミ 営業企画開発管理本部 東京営業所 係長

線形応力解析で試験の手間を激減今後は非線形応力解析も検討

もう一つ、吉田氏がSOLIDWORKSの効果を実感しているの
が製品の耐力試験の場面である。一般的に鉄骨やRCに比べ
て弱いとされている木造建築において、耐力は何よりも重要
だ。木造の建築物は、接合部分が回転しやすいため、柱と梁だ
けでは地震や強風などの水平荷重に抵抗できない。そんな木
造建築に、各部材をつなぐ金物の果たす役割はとてつもなく
大きい。
「試験は一試用でもそれなりの金額がかかります。また、試験
では『壊すための木材』も必要になります。ある意味、捨てて
いるようなものなのです」
タツミでは、社内のみならず第三者機関でも耐力試験を行っ
ている。今まではテストの都度製品を図面から見直したり、テ
ストのための木材を用意したりと、時間とコストのムダが多
かったという。しかし SOLIDWORKS Simulationを使用す
ることで、設計の段階である程度当てをつけられるようにな
り、試験回数が半減したのだ。具体的には、SOLIDWORKS 
Simulationの線形応力解析を実行、設計段階で応力の集中
する部分や、ゆがみの集中する部分を把握し製品に反映。そ
の結果、ある程度目標耐力をコントロールできるようになり、
ムダな試験をしなくても済むようになったのだ。
だが、まだまだ吉田氏は満足していない。
「今後は非線形解析も導入していきたいですね」吉田氏は、ま
だ同社では導入前のSOLIDWORKS Simulation非線形解
析のセミナーを心待ちにしているようだ。
今後タツミは、さらにSOLIDWORKSを活用していく場面を
増やしていくという。3次元モデルを使ったプレゼンテーショ
ンによる試験の省力化、金型や板金加工への展開など社内で
の利用推進を検討中だ。
それと同時に、DIYブームを見据えた家具部門での金型など、 
SOLIDWORKSの機能を使ったさまざまな新規事業にも意欲
を示している。その中心が、社内随一のSOLIDWORKSの使
い手として、多くの部分を任されている吉田氏の活躍である
ことに疑いの余地はない。