独自技術で製品開発に挑み続け接合金具の代名詞「テックワン」を開発
新潟県見附市に本社をおく木造建築の総合資材メーカー・株
式会社タツミは、日本の伝統工法である在来軸組み工法を進
化させた金具接合工法のパイオニア。その供給数は市場の
60%と圧倒的シェアを占めている。
同社では接合金具の代名詞でもある「テックワン」を始め、さ
まざまな木造建築向け商品群を持ち、ハイレベルで自由度の
高い施工精度を実現している。また自社および第三者機関に
て耐震実験・強度実験を重ねることによる耐久性、そして職人
不足に伴う現場効率化・流通効率化まで考慮した商品開発に
も力を入れている。
そのほかに、あらかじめ工場で木材をカットして金物をとりつ
ける「プレカット」に着手。CADセンターにて伏図・加工図・構造
計算を行い、構造躯体一式を現場に納入している。
近年同社を取り巻く環境も変わってきている。
2010年に施行された「公共建築物等木材利用促進法」に象徴されるよう
な林野庁による戦後植林の有効利用促進がすすめられるな
かで、同社の役割はますます大きくなっていくであろう。
建築金物の設計図を 3次元化し、業務効率化を実現
「最近は木材のもつ『温かみ』が見直され、特に小・中学校など
でニーズが高いですね」と、株式会社タツミの営業企画開発
管理本部東京営業所係長・吉田邦生氏は、まだリフォームされ
たばかりの真新しい東京営業所オフィスで、そう切り出した。
近年の木質系構造部材の技術向上や国の政策によるバック
アップにより、広い空間が必要な公共建築物・学校・介護施設・
店舗等においても木造建築のニーズが増えることが予想さ
れている。
ただ、そのニーズに応えていくには、建築金物の製作時間お
よび試験時間短縮、さらにはコスト削減も目指していかなけ
ればならない。そんな中、吉田氏は2次元CADを用いての開
発から製作までの工程に限界を感じていたという。
「本来、木材同士をしっかりつなぐための『継手』や『仕口』部
分は、熟練の大工の腕が必要なのです。そこを特殊な技量が
なくても組み立てを可能にするのが当社の建築金物です」
タツミの提供する建築金物は、建築現場での効率化を実現す
るばかりでなく、耐震性や堅牢性に優れたものである。にも関
わらず、建築金物自体の2次元CADによる作図を読み解くの
に相応のスキルと経験が求められてしまうとあっては、本末
転倒というわけだ。
「作図作業自体もそうですが、作図を読み解くにも平面だと
それ相応の経験を必要とします」
こうした同社および吉田氏の危機意識は決して最近に始まっ
たことではない。
「会社のほうにも、新しいものをどんどん入れていきましょう
と提案しました」吉田氏は独学でSOLIDWORKSの使い方を
習得、分厚い参考書を読み込まなくても直感で使いやすいイ
ンターフェースが特に魅力という。こうした印象は、何も吉田
氏に限ったことではない。SOLIDWORKSに初めて触れる若
い社員でも、4日間程度の研修で使いこなせるようになり、
「私は直接何も教えていません。とても手離れが良いですね」
と吉田氏はにこやかに語る。
現在タツミでは吉田氏を筆頭に4名がSOLIDWORKSを使っ
た建築金物の開発から製作に携わっており、さまざまなメリッ
トを感じているという。作図時間の面では、簡単な金具であ
れば1日程度必要だったものが数時間で、特殊な金型の場合
6日程度必要だったものが2日程度まで短縮できるようになっ
たという。
メリットは時間短縮だけではない。製図完成後のチェックに関
しても、ほぼミスがなくなり、ムダなチェックを省くことができ
るようになったという。
「SOLIDWORKSの良さを一番実感するのは、モデリングから
図面を作成する過程です。製造現場は紙図面を使いますが、
以前は三面図を描いてモデルと突き合わせていました。そこ
では図面を読み取る技量も必要になってきます。たとえば隠
線一つ見落とさないようになるまでには、たいへんな技術と
労力がかかります。それが今ではモデルデータと紙図面がリ
ンクするようになったのです」
それは製造現場とのコミュニケーションの場面にとどまらな
い。たとえば営業現場では、お客様に3次元化したモデリング
を見せることによってイメージが伝わりやすくなり、俯瞰で見
たいという要望にもタブレット一つでその場で応えられる、と
いう具合だ。