Challenge
ヒューマノイド ロボットの開発と関連するロボットについての研究を効率的、効果的に実施し価格を抑える。
Solution
機械設計と電気設計のソリューションであるSOLIDWORKS Research版を導入する。
Results
- 設計効率が3~4倍に向上
- 機械設計、電気設計、熱設計を同時に実施
- 部品をより複雑化
- ヒューマノイド ロボット研究を推進し、20体以上のロボットを開発
ヒューマノイド ロボットの開発と関連するロボットについての研究を効率的、効果的に実施し価格を抑える。
機械設計と電気設計のソリューションであるSOLIDWORKS Research版を導入する。
早稲田大学は、人間形ロボット研究をけん引し、1973年には初の本格的な人間形ロボットであるWABOT-1の開発に成功しています。2000年には、高度情報化社会における人間と機械の新しい関係を築く研究活動を推進するために、ヒューマノイド研究所(HRI)を設立しています。高西淳夫教授(早稲田大学創造理工学部総合機械工学科)の指導のもと、HRIはヒューマノイド ロボットの研究開発(R&D)を推し進めています。この研究所は東京を拠点とし、基礎的なロボット工学技術を創造しながら、同時に優秀なエンジニアや科学者を何人も輩出しています。HRIの研究目的としては、定例作業の実施、治療の補助、コンパニオンとしてのサービス提供などがありますが、いずれにしても、研究の焦点は、人間とやり取りを行うロボットを開発することです。このようなロボットは人間の生活環境の中でともに作業するため、同じ職場で同じ体験を積むことになります。したがって、外見が人間に似ているだけでなく、人間と同じ思考と行動パターンを備えていなければなりません。橋本健二准教授によると、早稲田大学は当初、ヒューマノイド ロボットの開発に2次元設計ツールを使っていましたが、HRIは2001年に、ヒューマノイド ロボットのR&Dを進めるうえで、統合型3次元開発プラットフォームが必要との判断に至りました。橋本准教授は「私たちのロボットは複雑なシステムで構成されていて、発声、顔の表情、体の動きに関連するセンサーからの情報をまとめる必要があります。その結果、高レベルのコミュニケーションと協調的行動が成立するのです。私たちのチームが目的を達成するには、3次元設計ツールとエンジニアリング ツールの完全なセットが必要だったのです」と説明します。HRIは、主流となっている3次元設計システムをいくつか試した結果、標準プラットフォームとしてSOLIDWORKS Research版を選択し、60ライセンス導入することにしました。HRIがSOLIDWORKS Research版を選んだのは、そのインターフェイスが他の3次元パッケージよりも使いやすく、設計ツールとシミュレーション ツールが統合化されていて応用範囲が広いことが決め手でした。
2001年にSOLIDWORKS Research版を導入し、統合型3次元プラットフォームで作業するようになってから、HRIのロボット開発のペースは上がり、ヒューマノイド ロボットを20体以上開発するまでになりました。代表的なロボットの例を挙げます。Waseda Legシリーズ(二足歩行ロボット):身体障碍者や高齢者の移動を助ける二足歩行型のロボット。Waseda Jawシリーズ(咀嚼ロボット):歯科医術の概念を理解するために人間の咀嚼を機械的にシミュレートするロボット。Waseda Yamanashiシリーズ(開閉口訓練ロボット):顎に障害を抱えた患者の顎の動きを補助し、口の開閉を手伝いをするロボット。Waseda Flautist and Waseda Saxophonistシリーズ(人間形フルート演奏ロボット):フルートやサックスを演奏するロボット。Waseda Talkerシリーズ(人間形発話ロボット):日本語の母音と子音を機械的に発音するロボット。Waseda Eye and KOBIANシリーズ(情動表出ロボット):視聴覚嗅センサーと全身を動かし心理的な情動表出し、感情を表現するロボット。他のHRI製ロボットとしては、WABIAN-2Rがあります。これは、人間と同じような骨盤を持ち、7自由度(DOF)の脚部機構を使用して膝を伸ばして歩くロボットです。また、28自由度を持つ災害救助ロボットのWAREC-1、人間や、80kgまでであれば実質的にどのようなタイプの荷物でも運ぶことができるWL-16があります。「HRIは、機能が統合化されており応用範囲が広いSOLIDWORKS Research版を使用してロボット開発の生産性を向上させています。その結果、設計効率は3~4倍に向上しています」と橋本準教授は説明します。「2次元だとしたら、単純な平面状の構造部材くらいしか設計できなかったでしょう。SOLIDWORKSのおかげで、複雑なロボット部品を簡単に設計できるようになりました」
HRIは、機能が統合化されており応用範囲が広いSOLIDWORKS Research版を使用して、ロボット開発の生産性を向上させています。その結果、設計効率が3~4倍に向上しました。
HRIは、統合型SOLIDWORKS有限要素解析(FEA)ツールを使用して、剛性を保ちつつ部品を軽くするという、ヒューマノイド ロボット設計上の一番大きな課題を克服しています。「SOLIDWORKS Simulationは、脚歩行ロボットを設計するうえで不可欠です。高レベルの剛性を維持しつつ、その重量を可能な限り軽くする必要があるからです」と橋本準教授は強調します。「SOLIDWORKSで、ロボット部品の重心と慣性モーメントをすぐに計算できます。これはシミュレーションに使用する情報となります。また、3次元の状態で部品に干渉が発生していないかチェックします。アクチュエータ、モーター、駆動部などの熱源に対する冷却システムを設計する際にも、SOLIDWORKS Flow Simulation(数値流体動解析ソフトウェア)が役に立ちます」と橋本準教授は付け加えます。
HRIがSOLIDWORKS Research版で大幅な生産性向上を実現できたのは、このソフトウェアが統合型で複数分野に対応しているという性質もかかわっています。これで研究チームは、機械設計、電気設計、熱設計を別々でなく同時に実施できるようになりました。「SOLIDWORKSのテクノロジーは画期的です。1つのソフトウェアだけで機械設計と電気設計の両方を扱えるからです」と橋本準教授は説明します。「その他にも、構造FEAや熱流体解析などの各種解析をSOLIDWORKSで実行できます」と橋本準教授は続けます。「高度なロボットを開発するには、機械設計だけでなく、電気設計と熱設計も同時に実施できなくてはなりません。モーターや減速ギア、エンコーダーなどの構成部品を限られたスペースの中に配置する必要があります。各部品の小型化と軽量化を達成するのと同時に、FEA解析を繰り返しながら剛性を維持する必要があるのです。このような設計プロセスにSOLIDWORKSは非常に役に立っています」